はじめに
この記事では、私がスコットランドでお弁当テイクアウェイを2年運営してきた経験をもとに、具体的な手順や流れを解説します。
この記事は3部構成のうちの第3弾です。
以下の流れで解説します。当記事では
STEP3【立ち上げと運営】
を取り扱います。
STEP1 ビジネスの計画
アイデアの検討/許可/SNS
STEP2 開業準備
資格取得/届出/食品衛生管理マニュアル/パッケージングとラベリング/物資の調達/キッチン検査/事業登録
STEP3 立ち上げと運営
オペレーション計画の策定/集客とプロモーション
第1弾はこちら
第2弾はこちら
立ち上げと運営
新しいビジネスを始める際は、ついあれもこれもと理想を詰め込みたくなります。
私も当初はメニュー、キャパシティともに理想を詰め込み、開業後すぐに運営の限界が来たため、慌てて軌道修正をしました。
このように小さな飲食業こそ、徹底したルール作りをしておかないと持続ができなくなります。以下、私の失敗や経験を踏まえた上で、運営の計画やコツをまとめます。
オペレーション計画の策定
目標設定
初期(1ヶ月)・短期(3ヶ月)・中期(半年)・長期(1年~)の事業目標を設定します。例としては、
⚫︎1日あたりの注文数
⚫︎利益率
⚫︎顧客獲得
⚫︎集客目標(SNSや宣伝活動など)
などを決め、それらに対する具体的なアクションプランや価格帯を導き出します。
ただし、初期に高い目標を立てるのはお勧めしません。1〜2ヶ月後に再度目標を立て直します。
「やらないこと」の明確化
何をやるかの前に、何をやらないかも明確にします。例として、現状さくらキッチンでやらないことは以下の通りです。
✖️ 丈に合わない宣伝広告
✖️ 価格競争
✖️ 取扱が難しい食材の使用
✖️ 5種類以上のメニュー幅
「やらないこと」を決めることで、重要な作業のみに集中できるようになります。
販売動線の決定
①予約方法の決定
さくらキッチンでは独自の予約フォームを持っていますが、他にも多くの小さな飲食業では以下の方法で直接注文を取ることが多い模様です。
⚫︎ メール
⚫︎ 電話
②販売(納品)方法の決定
商品をどのように顧客に納品/販売するか計画します。
PART1にて様々な販売方法をご紹介しているので併せてご覧いただき、ご自身にあった方法を採用してください。
③決済方法の決定
決済方法にもいくつか方法があります。
⚫︎ 銀行振込
⚫︎ 現金
⚫︎ カード
などがあります。おすすめの決済システムや、カード決済機も今後詳しく紹介します。
メニューの最終決定
①コンセプトの決定
まず、提供する料理のコンセプトやジャンルを決定します。
②メニュー候補のリストアップ
コンセプトに沿ったメニュー候補をリストアップします。この際、調理時間や材料、原価などもメモしておきます。
③試作・試食
試作し、味や見た目、調理時間などを評価します。家族や友人にも試食してもらい、フィードバックを得ます。
④改善・最終決定
試作・試食の結果をもとに、メニューを改善し最小限に絞り込みます。PART1の市場分析を振り返り、ターゲットとする市場において独自性があるかを再検討します。※メニュー幅は徐々に増やせると仮定し、最初は最小限に留めることをお勧めします。
⑤価格設定
選定したメニューの原価を計算し、適切な価格設定を行います。利益率を保ちつつ、競合他店と比較して適正な価格に設定します。逆に価格設定からメニューを決めてもOKです。
⑥メニュー表作成
最終的に選定されたメニューをもとに、メニュー表を作成します。おすすめの画像デザインアプリはCanvaです。
調達/仕入れ
⚫︎パッケージ資材
⚫︎調理器具
⚫︎機械
などの仕入れ先候補と価格をリストアップし、選定します。
資材はサンプルを取り寄せられる場合があります。
タスクの洗い出し
全てのタスクをリストアップします。
タスクの優先順位付け
優先順位を付け、作業の順番を決めます。
ルーティン作成
⚫︎掃除と消毒 20分
⚫︎注文の最終確認/注文表の印刷 5分
⚫︎仕込み・調理・盛り付け
⚫︎販売・受け渡し
⚫︎片付け 20分
⚫︎掃除と消毒 20分
⚫︎洗濯 3分
⚫︎在庫チェック 3分
⚫︎事務作業(SNS更新・経理・予約対応・食材や資材の注文など)
※PART2にて食品衛生管理の法律やガイダンスについて紹介しています。法律に基づいた清掃の方法などはマニュアルをご確認ください。
場所の確保
⚫︎食材保管場所
⚫︎資材の在庫保管場所
⚫︎調理道具や掃除用品などの保管場所
などの場所を確保した上で、仕入れ→保管→調理→梱包→納品/販売の動線を決めます。
集客とプロモーション
SNSの活用
SNSは現代の新しいビジネスにとって必須です。個人アカウントではなくビジネスアカウントとして登録をしましょう。各プラットフォームの特性や使い方は以下です。
ビジュアルのプラットフォーム
料理の写真や動画を投稿します。ストーリーズ機能を使って日々の裏側や新メニューの紹介のほか、質問やアンケートも効果的です。
コミュニケーションのプラットフォーム
イベントやプロモーション情報をシェアし、地域コミュニティグループに参加して情報を共有するのもおすすめです。DMで質問や注文なども受け付けられます。
リアルタイム情報のプラットフォーム
新メニューのお知らせや営業時間の変更情報をタイムリーに伝えることができます。コミュニケーションも取りやすいです。
ショート動画のプラットフォーム
おもしろいコンテンツや「過程」を紹介することで注目を集めることができます。ハッシュタグや流行のスタイルを取り入れるのも効果的です。
さくらキッチンでは、InstagramとFacebookをメインに更新しています。TikTokは上手く使えていませんが、認知を広げるには大きな可能性があると感じています。
これらを上手く活用すると広告費をかけずに集客ができます。
Webサイト
シンプルなウェブサイトを作成し、メニューや営業時間、連絡先などの基本情報を掲載します。また、オンライン注文や問い合わせができるようにしておくと、便利です。
最初はSNSをメインに、余裕が出てき次第、Webサイトを作るのでも良いと思います。実際さくらキッチンでは起業1年後にWebサイトを開設しました。
Google Map
人はお店を地図上で探します。新規顧客にどんどん見つけてもらうためにもGoogle Mapに登録し、WebサイトやSNSなどの情報も置いておきましょう。
こちらも余裕が出てきてからで良いかと思います。さくらキッチンの多くのご新規様はGoogle Mapを見て来てくださるので、効果を感じています。もちろん登録は無料です。
地域型プロモーション
地域のコミュニティやイベント、フェアなどに参加すると、地域との繋がりができ、地域の顔なじみ顧客を獲得できます。地域のファーマーズマーケットに参加しているスモールビジネスオーナーも多いです。Facebookの掲示板や地域のウェブサイトからイベント主催者を探せます。
広告
近くの店舗へのチラシ配布や、ポスター掲示なども効果的です。さくらキッチンでは事業規模が大きくなったら広告を活用しようと思いますが、現状広告はかけていません。
まとめ
まとめ&2023年に小さな飲食業を運営する上で大事にするべきこと
✔︎ 効率化が命
品質を維持するため、最初は小さなキャパシティで始め、徐々に作業を効率化しながらキャパ拡大をするのが良いと思います。時間/労力/場所/コストの無駄を定期的に見直し、どんどん改善しましょう。
✔︎ オンラインを活用する
大小問わず、近年の飲食業ではオンラインは切って離せません。SNSやWebサイトを活用して集客を行い、注文やコミュニケーションにも対応しましょう。また、予約管理や財務管理など、運営を助けてくれるシステムもたくさんあります。おすすめは今後紹介します。
✔︎ 地域コミュニティへの積極的な参加
地域のコミュニティやイベントに参加し、地元の人々とのつながりを深めることで、口コミや評判、支持に繋がります。全国区でオンライン販売をする場合も、地域での販売を視野に入れましょう。
✔︎ カスタマーサービスは丁寧に
顧客満足度は、美味しい食事だけでなく、心地よいサービスによっても大きく左右されます。無理のない範囲で丁寧な接客や対応を心がけ、顧客に良い印象を持ってもらいましょう。
以上、私の経験を踏まえて【立ち上げ&運営】の解説でした。これらのポイントをもとにオペレーション計画を立てることで、2023年に小さな飲食業を成功させるための基盤が築かれます。
開業準備にかかった費用と期間
費用
£1040
トレーニング費用、設備や機械、メニュー開発、決済システム、資材や食材選びなどなど。多くの器具はもともとあったものを使い、オープン後に買い足しました。
業務用炊飯器や、おすすめの商品に関しては別記事にて紹介します。
期間
1ヶ月
私はビジネスアイデアが固まってから、オープンまで最速で準備しましたが、皆さんにはもう少し準備に時間をかけることをお勧めします。多くの人は2〜3ヶ月以上かけるようです。
さくらキッチンFAQ
A:理由は2つ。地域には日本食ビジネスが全くなかったため、ニッチが確実であったこと。また、料理は一品売りが主流のスコットランドにおいて、数種類のおかずが1箱に入っているスタイルは珍しく、ボリューム的にも見た目的にもコンセプト的にも、将来スコットランドの飲食業界においてポジションをとれると思ったから。
A:マニュアル作成とメニュー開発。オープン直前まで試作と練習を繰り返しました
A:Googleフォームを魔改造。私にとってDM予約はミス多発が目に見えていたため避けました
まとめ
イギリスで自宅で飲食業・食品販売を始めるためには以下の手順が必要になります。
STEP1 ビジネスの計画
アイデアの検討/許可/SNS
↓
STEP2 開業準備
資格取得/届出/食品衛生管理マニュアル/パッケージングとラベリング/物資の調達/キッチン検査/事業登録
↓
STEP3 立ち上げと運営
オペレーション計画の策定/集客とプロモーション
税金や財務に関する知識も必要ですが、詳しくは別の記事で解説します。
計画を立て、適切な準備を行えば、自宅で飲食業・食品販売を成功させることは全くもって不可能ではありません。最初は小さなスタートでも、コツコツと成長させていくことで、愛される大きなビジネスにもなるでしょう。在英(在外)邦人の皆さんが、新しい飲食/食品ビジネスを立ち上げるきっかけになれれば嬉しいです。
おわりに
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。この記事が役に立ったら、コメント・いいね・わるいね・RTなどしていだけると嬉しいです。高頻度更新はできないのですが、当サイトを通して皆さんにたくさんの有益情報をお届けできるよう努めます!
この記事は3部構成のうちの第3弾です。
第1弾はこちら
第2弾はこちら
続編について
当3記事では、自宅で飲食業を開業する具体的な方法について大まかな流れを解説しました。
ですが、実際に飲食の起業を検討されている方は、マニュアル作成や資格取得の方法、届出やキッチン検査など、さらに実践レベルに落とし込んだ具体的な方法についても確認しておきたいかもしれません。そんな方のために「飲食開業完全ロードマップ」も準備中ですので、今しばらくお待ちください。
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